連載第7回も、現場の実務に直結する大切なお話です。テーマは「食事介助」。これは、利用者の命にかかわる、とても重要な内容でした。
研修で先生がはっきりと指摘されたのは、「食事中の窒息事故がなかなかゼロにならないのは、正しい介助の方法が伝わっていないからだ」ということです。裏を返せば、正しい方法を知り、実践すれば、防げる事故がたくさんあるということでもあります。
では、どこに落とし穴があるのか。先生が挙げられたのは、「立ったままの食事介助」でした。立って介助をすると、利用者は介助者の顔を見上げるかたちになり、自然と上を向いてしまいます。人は誰でも、ものを飲み込むときには、少し前かがみの姿勢になります。反対に、上を向いた姿勢では、食べ物や飲み物が気管のほうへ入りやすく、むせや窒息の危険が高まってしまうのです。
ここで、「では、立ったままでも下のほうから口へ運べばよいのでは」という疑問がわきます。けれど先生は、「それでもダメなのです」とおっしゃいました。利用者は、スプーンや箸ではなく、介助している人の顔を見ようとします。だから、介助者の顔の位置が高いと、やはり上を向いてしまう。つまり大切なのは、介助する私たちが「座って、利用者と同じ目線の高さになる」こと。そして、まっすぐ口の前から、ゆっくりお口に運ぶこと。しっかり噛んで飲み込まれたのを確かめてから、次のひと口をお出しすることなのです。
このお話には、心が温まる続きがありました。ある施設に、背の高い職員がいて、椅子に座っても、小柄な利用者と目線が合わないことに悩んでいたそうです。その職員は、自分でホームセンターへ行き、ちょうどよい高さの低い椅子を見つけて買ってきた――。「なぜそうするのか」という理由を理解すると、人は自分で工夫しはじめます。先生は、「介護の方法の意味や根拠を理解することで、自分で考えて改善できるようになる。だから介護の仕事が面白くなり、長く続けられるのです」と語られました。
ほかにも、車いすのフットレスト(足置き)の位置によって足が前に出すぎると、前かがみになれず食べづらくなること、食事介助の手順は「準備・介助・口腔ケア」まで一枚にまとめると現場で使いやすいこと(長すぎるマニュアルは読まれず、覚えられません)など、すぐに役立つ知恵をたくさんいただきました。
食事は、一日のなかの大きな楽しみであり、同時に、命にかかわる場面でもあります。「座って、同じ目線で、まっすぐに」。この基本を全員で大切にし、安全で、おいしく、笑顔になれる食事の時間を守っていきます。
次回は、職員が長く元気に働ける「働きやすい職場づくり」についてお伝えします。
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