連載もいよいよ最終回です。最後は、研修全体を通して感じたこと、そしてこれからの私たちの想いをお伝えします。
菊地先生がひとつのエピソードを紹介してくださいました。お母さまを特養に預けたことを、ずっと心苦しく思っていた娘さんのお話です。その娘さんが面会に行くと、お母さまがうれしそうにこう話されたそうです。「昨夜、空気が乾いているなと思っていたら、ケアさんがタオルを濡らして干しに来てくれたの。そして部屋を出るとき、布団のずれを直したあと、『寒くないですか』と言いながら、足もとを軽くポンポンと叩いて空気を抜いてくれたのよ」。娘さんは、職員の気遣いはもちろん、何よりお母さまの笑顔がうれしかった、というお言葉をいただいたお話です。
この笑顔をつくったものは、何だったのでしょうか。先生は言います。この職員は、特別なことをしたわけではありません。タオルを干しに来たのもルーチン業務の一つだったのでしょう。ただ、この職員は布団がずれていることに気づき、気づいても見て見ぬふりをせずに直し、「寒くないですか」と一声かけ、冷たい空気が入らないようにそっと空気を抜いた――ただ、それだけのことです。けれど、その小さな心配りが、利用者を、そして遠くにいる娘さんまでも笑顔にした。「幸せの構図」を描けるのが介護なのだと、先生は教えてくださいました。
最後に先生は、「介護」という言葉の意味を示してくださいました。「介」は、心にかける、気にかけること。「護」は、まもり、かばい、たすけること。心にかけて護るためには、自分の何気ない言葉で人を傷つけてしまうことを、誰よりも恐れる人でいてほしい――そう語りかけてくださいました。
今回の研修を通して、私たちはたくさんのことを学びました。人権と尊厳を護ること。丁寧な言葉で向き合うこと。人生の最終章に寄り添うこと。学び続けること。車いすや食事介助といった日々のケアの基本を、根拠から理解すること。そして、職員が元気に働ける職場をつくること。どれも特別なことではなく、日々の小さな心がけの積み重ねです。けれど、その小さな積み重ねこそが、利用者お一人おひとりの幸せを形づくっていくのだと、改めて気づかされました。
研修で学んだことを、学びのままで終わらせない。明日からの現場で、少しずつでも実践していく。それが、講師の先生と、ここで暮らす利用者の皆さまへの、いちばんの恩返しだと考えています。
そして最後に。
私たちは、「誰かの大切な誰かを、安心してお任せください」と言える施設でありたいと願っています。同じ想いで介護に向き合ってくださる仲間との出会いも、心からお待ちしています。
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