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2026年8月4日火曜日

第6回|車いすは「移動の道具」 ― 正しく使う、という気づき


 連載第6回からは、現場の実務に直結するお話です。今回のテーマは「車いす」。

菊地先生は、開口一番こうおっしゃいました。「車いすを、いまだに『座る道具』だと思っていませんか」。車いすは、本来は人を運ぶための――つまり「移動のための道具」です。長い時間、心地よく座っていただくことを目的には作られていません。

その理由を、先生は分かりやすく説明してくださいました。車いすの座面に張られている布(スリングシート)は、使わないときに折りたたんで収納できるよう、薄い一枚布でできています。一方で、私たちが普段すわっている椅子を思い浮かべてみてください。クッションの下には、必ず硬い板のような面があります。その硬い面があるからこそ、体重がうまく分散され、お尻が痛くなりにくいのです。ところが、車いすの一枚布は、お尻に張りつくように沈みこんで、体重を分散してくれません。そのため、長く座っていると、お尻が痛くなり、かなりの苦痛にもなってしまうのです。

では、私たちは何を変えればよいのでしょうか。まず大切なのは、「車いす=移動のための道具」と意識を切りかえることです。移動が終わったら、できるだけ早めに、しっかり体を支えられる椅子やソファに座り直していただく。やむなく長い時間車いすで過ごす場合には、体重を分散するクッションを使ったり、姿勢が崩れていないかこまめに確認したり、座り直しのお手伝いをしたりする。どれも特別な道具がいるわけではなく、「知っているかどうか」で、明日からすぐにできる工夫ばかりです。

何気なく使っている車いす一つにも、お一人おひとりの体と心地よさを守るための「理由」があります。その理由を知ることが、よりよいケアへの第一歩になる。そう教えていただいた時間でした。次回は、同じく現場の実務から、「食事介助のきほん」についてお伝えします。