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2026年7月21日火曜日

第4回|看取り介護 ― 最後のひとときに、エピソードを


 連載第4回は、研修のなかでも多くの職員の心を打った「看取りの介護」についてです。

近ごろは、医療機関に長く入院することがむずかしい時代になってきました。治療を終えた方は、早めにご自宅や施設へ戻ってこられます。そうしたなかで、暮らしの場である施設には、これまで以上に「最期まで寄り添う」役割が求められるようになっています。

看取りと聞くと、特別で難しい介護のように感じるかもしれません。けれど菊地先生は、「看取りは特別な介護ではない」とおっしゃいました。日々の介護と同じように、心地よく過ごしていただき、安心して最期を迎えていただく。ただひとつ違うのは、残された時間が限られていると分かっていること。だからこそ、その時間にしかできない「思い出づくり」ができるのだ、と。

先生が紹介してくださったエピソードがあります。もうすぐ白寿(99歳)のお誕生日を迎える女性が、お食事をとるのが難しくなってこられました。医師から、これ以上の無理は本人を苦しめてしまうと説明があり、その日からご家族にもお伝えして、看取りの介護に移ることになりました。その引き継ぎを受けた、担当の若い職員が、施設長のもとへ走ってきて、こう尋ねたそうです。「もうすぐ白寿のお誕生日なんです。それまで、持つでしょうか」。施設長が「お食事をとることができなくなってだんだん衰弱していくから、その日まで命は持っても、お誕生日と分からなくなっているかもしれないよ」と伝えると、その職員は言いました。「お誕生日のお祝いを、早めてはいけないでしょうか」。

ご家族の承諾をとるようにと言われ、その職員は夜勤の合間に、全国に散らばるお子さんたちへ次々と連絡をしました。すると、みなさんが「ぜひ早めてお祝いしてほしい」、そして「私たちもそこに参加したい」とおっしゃった。全国からお子様たちも集まり、なんとか一週間早く、お誕生会を開くことができたのです。十数年ぶりに集まったごきょうだいは、「次に集まるのは母の葬式のときだと思っていた」と、思わぬお祝いの席をともに喜ばれたそうです。後日、ご家族から届いたお手紙には、「母にとって、最高の人生の最期でした」「あんなにたくさんの人に見送られて、母は本当に幸せ者でした」とつづられていました。

特別な技術があったわけではありません。目の前の方とご家族のために、何ができるかを一生懸命に考えた。その積み重ねが、忘れられない最期のひとときをつくります。こうしたケアに触れた実習生が「ここで働きたい」と言って巣立っていく、というお話も印象的でした。私たちも、お一人おひとりの最終章に心を込めて寄り添い、「ここで過ごせてよかった」とご本人にもご家族にも思っていただける介護を、これからも大切にしていきます。次回は、学び続けることの大切さ――これからの介護に必要な知識についてお伝えします。